心筋SPECTのpolar mapでみる正常パターン

 
要点
  • SPECTの定量では、様々な心筋血流の定量法が知られているが、この項ではpolar mapでのセグメントにおける正常範囲を示す。
  • 標準パターンは、男性と女性、180°収集と360°収集で差が認められる。
  • 日本と米国での標準データベースも差があるため、対象に適したデータベースにより診断精度は改善する。
 
  • SPECTの定量評価では様々なソフトウェアが用いられているために、その計算アルゴリズムにより、平均と標準偏差の値は異なる可能性がある。本稿では、QPSソフトウェア(Cedars Sinai Medical Center)により算出されたモデルについて、その正常パターンを示す。
 

男女差

  • 一般的には女性では乳房での減弱により前壁から心尖部で低値であり、男性では横隔膜の吸収により下壁が相対的に低値になる。また、女性では個人差により前壁で偏差が大きく算出される。
 

180°収集と360°収集

  • 360°収集では下壁中隔側が相対的に低値に算出される。一方、180°収集では中隔側の低下が少なく、前壁から前壁中隔付近が相対的に低く見えるパターンとなる。
 

日本と米国での標準データベース

  • 体格の違いにより、標準データベースは米国人の方が性差が大きくなる。すなわち、女性の前壁低下、男性の下壁低下ともに、米国人の方が大きい。

polar map

 

参考論文

  • Nakajima K, Kumita S, Ishida Y, et al. Creation and characterization of Japanese standards for myocardial perfusion SPECT: Database from Japanese Society of Nuclear Medicine Working Group. Ann Nucl Med 2007; 21: 505-511
  • Nakajima K. Normal values for nuclear cardiology: Japanese databases for myocardial perfusion, fatty acid and sympathetic imaging and left ventricular function. Ann Nucl Med 2010; 24: 125-135

[KN: 2010.08.01]

gated SPECTによる左室容積と駆出分画

要点
  • 心電図同期心プール検査は、駆出分画算出にあたっては標準的な方法とされてきたが、現在は心電図心筋SPECTにより算出される駆出分画が用いられることが多い
  • 日本人で算出された駆出分画と左室容積の標準値を以下に記載する
  • 小心臓(small heart)では駆出分画が高く算出されること、女性では男性よりも5%程度、駆出分画高く算出されることに注意する
 
  • 心筋血流gated SPECTでの、駆出分画の正常範囲を、日本核医学会ワーキンググループ(WG)データベースとJ-ACCESS多施設共同研究と比較して以下に示した。
  • 日本核医学会WGの収集時の条件は以下の通りである。
    • Tc-99m心筋血流製剤
    • 1心拍を16分割
    • 360度と180度は一括
 
 
JSNM WG
J-ACCESS
Male
Female
Male
Female
EF (%)        
mean 64 69 63 74
SD
7
7
7
9
±2SDの範囲 
50-78
54-84
49-78
55-92
EDV(ml)
       
mean
 80
64 
 88
59 
SD
16
13
23
17
±2SDの範囲
49-112
39-90
42-134
25-93
ESV(ml)
       
mean
29 
 20
 33
 17
SD
9
7
13
10
±2SDの範囲
12-47
7-34
6-60
0-36
EDVI (ml/m2)
       
mean
 47
42 
51 
39 
SD
9
7
12
11
 
30-64
29-55
28-75
18-61
ESVI (ml/m2)
       
mean
17 
 13
 19
 11
SD
5
4
7
6
±2SDの範囲
8-27
5-22
5-33
0-24
 

参考文献

  • JSNM-WG
    • Nakajima K. Normal values for nuclear cardiology: Japanese databases for myocardial perfusion, fatty acid and sympathetic imaging and left ventricular function. Ann Nucl Med 2010; 24:125-135
  • J-ACCESS
    • Nakajima K, Kusuoka H, Nishimura S, Yamashina A, Nishimura T. Normal limits of ejection fraction and volumes by gated SPECT based on J-ACCESS database in clinically normal patients without cardiac events. Eur J Nucl Med Mol Imaging 2007;34: 1088-1096

[KN: 2010.08.01, 改訂2011.02.18]

gated SPECTによるwall thickening

要点
  • 心電図同期心筋SPECTでは、局所の壁運動(motion)をmm単位で、局所の収縮時壁肥厚率(thickening)を%単位で示すことが多い。
  • 中隔のmotionは相対的に低値で、バイパス手術後には低値を示す。
  • 収縮時の壁肥厚率は心尖で高く心基部では低くなり、gated SPECTの壁運動評価に適している。
 
  • Gated SPECTでは、壁運動を評価する際に、motion(mm)とthickening(%)で計算されることが多く、QGSソフトウェアでもこの方法を採用している。
  • Motionは中隔側では生理的にも相対的に低値になる。通常の3次元での心室壁運動シネ表示は、このmotionの輪郭と同じものを見ている。
  • バイパス手術などの外科手術後は、中隔のmotionは心内膜面でみると一見低下に見えるが、thickeningが保たれている。そこで、両者の特徴を理解し、thickeningにより壁運動を評価する方が実際的である。

Polar map

典型的な標準パターンを示す例

 
  • 壁運動の収縮時肥厚率は心尖が高く、心基部で低値になり、中隔と側壁側で大きな差が見られない。
17セグメントモデル
男性
女性
心基部の6セグメント
 
 
mean
25
25
SD
10
9
±2SDの範囲
6-44
6-44
中央の6セグメント
 
 
mean
47
53
SD
9
9
±2SDの範囲
29-66
35-71
心尖の4セグメント
 
 
mean
63
69
SD
11
11
±2SDの範囲
42-84
47-92
心尖部
 
 
mean
74
78
SD
12
12
±2SDの範囲
50-98
53-102
  • 平均-2SDを下限とすれば、男性では中央、心尖寄り、心尖部の各領域で、約30%、40%、50%が目安となり、女性では5%を加えると良い。
 

参考論文

  • JSNM-WG
    • Nakajima K. Normal values for nuclear cardiology: Japanese databases for myocardial perfusion, fatty acid and sympathetic imaging and left ventricular function. Ann Nucl Med 2010; 24:125-135
    • Akhter N, Nakajima K, Okuda K, et al. Regional wall thickening in gated myocardial perfusion SPECT in a Japanese population: Effect of sex, radiotracer, rotation angles and frame rates. Eur J Nucl Med Mol Imaging 2008; 35: 1608-1615

[KN: 2010.08.01, 改訂2011.02.15]

gated SPECTによる拡張機能

要点
  • 心プールシンチグラフィの容積曲線の解析から、拡張期指標が求められてきた。
  • 同様に、心電図同期心筋SPECTの容積曲線をもとに、拡張指標が計算できる。
  • 拡張指標に影響を与える因子を理解して用いる必要がある。
  • 拡張機能は、虚血性心疾患、心不全、心筋症等で障害が出現する。
 
  • 核医学では容積曲線の解析から以下のような指標を用いることが多い

    Volume curve

    • PFR: peak filling rate
    • TPFR: time to peak filling rate
    • 1/3 mean FR (MFR): 1/3 mean filling rate
 
  • 各パラメータの正常値を、日本核医学会ワーキンググループデータベースより示す。同一の基準を用いた場合、高齢者では拡張障害の頻度が高くなるので注意する。
 
全症例
60歳未満
60歳以上
peak filling rate (/sec)
 
 
 
mean
2.69
2.79
2.58
SD
0.57
0.53
0.60
±2SDの範囲
1.55-3.83
1.73-3.85
1.38-3.78
1/3 mean FR (/sec)
 
 
 
mean
1.60
1.68
1.51
SD
0.39
0.30
0.47
±2SDの範囲
0.82-2.38
1.08-2.28
0.57-2.45
TPFR (msec)
 
 
 
mean
167
159
176
SD
38
26
48
±2SDの範囲
91-243
108-210
80-273
TPFR/ RR
 
 
 
mean
0.18
0.17
0.18
SD
0.03
0.02
0.04
±2SDの範囲
0.12-0.24
0.13-0.22
0.11-0.26
 

参考論文

  • Nakajima K. Normal values for nuclear cardiology: Japanese databases for myocardial perfusion, fatty acid and sympathetic imaging and left ventricular function. Ann Nucl Med 2010; 24:125-135

[KN: 2010.08.01]

I-123 MIBG H/Mの正常値とコリメータによる差異

要点
  • MIBGの定量にあたっては心縦隔比(H/M比)が簡便な方法として用いられており、特に心不全の予後評価におけるエビデンスがある。
  • H/M比の算出にあたっては、心筋と縦隔に関心領域をとり、その平均カウントの比を計算する。
  • SPECTでは心尖下壁側で低値になる傾向がある。
 
  • I-123 MIBGの定量にあたっては、心臓と縦隔に関心領域をとる心縦隔比(H/M ratio)を用いる方法が簡便である。この方法は簡潔ではあるが、関心領域(ROI)の位置に関しては設定者間のばらつきも生じやすいため、一定の設定基準を設けることが望ましい。
  • 一般的には心臓のROIは、心臓全体を含むように設定するか、円形ROIを用いる。また、縦隔の関心領域は、肺や甲状腺にかからないように、中央で上1/3にとる方法が用いられることが多い。

planar HM

  • 関心領域を半自動で設定する方法を用いれば、設定者間や施設間の差を軽減できる(下記文献)
  • 心不全を対象にしたMIBGの予後調査研究では、H/M=1.6あるいは1.7以下では、致死的イベントを発生する頻度が高く、リスクが高いとみなされている。

 
低エネルギーコリメータ
中エネルギーコリメータ
早期H/M比
 
 
mean
2.39
2.76
SD
0.21
0.31
±2SDの範囲
1.97-2.81
2.14-3.38
後期H/M比
 
 
mean
2.49
3.01
SD
0.25
0.35
±2SDの範囲
1.99-2.99
2.31-3.71

これらの低エネルギー用と中エネルギー用のコリメータのH/Mの差異を、校正ファントムにより補正する方法も利用できる(下記文献)。

  • MIBGの洗い出し率(中央値と四分位点の1/4-3/4で示す)
    • 時間減衰補正あり:中央値 16%(正常範囲 9-23%)
    • 時間減衰+バックグラウンド補正:中央値 13%(正常範囲 3-22%)
  • SPECTでのMIBG正常パターンを示す。下壁の心尖寄りが低値であることに注目できる

Polar map

 

参考論文

  • Nakajima K. Normal values for nuclear cardiology: Japanese databases for myocardial perfusion, fatty acid and sympathetic imaging and left ventricular function. Ann Nucl Med 2010; 24:125-135
  • Nakajima K, Matsubara K, Ishikawa T, et al. Correction of I-123-labeled meta-iodobenzylguanidine uptake with multi-window methods for standardization of the heart to mediastinum ratio. J Nucl Cardiol 2007; 14:843-851
  • Matsuo S, Nakajima K, Yamashina S, et al. Characterization of Japanese standards for myocardial sympathetic and metabolic imaging in comparison with perfusion imaging. Ann Nucl Med 2009; 23:517-522

追加文献2011/12

  • Okuda K, Nakajima K, Hosoya T, Ishikawa T, et al. Semi-automated algorithm for calculating heart-to-mediastinum ratio in cardiac Iodine-123 MIBG imaging. J Nucl Cardiol. 2011;18:82-9
  • Nakajima K, Okuda K, Matsuo S, Yoshita M, et al. Standardization of metaiodobenzylguanidine heart-to-mediastinum ratio using a calibration phantom: Effects of correction on normal databases and a multi-center study. Eur J Nucl Med Mol Imaging 2012;39:113-9

[KN: 2010.08.01, 2011.12.21]

 

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