第7回 日本心臓核医学会学術大会 抄録

 

パネルディスカッション
PETによる心疾患の評価
-PETの魅力・臨床医へのメッセージ-

 

1)心不全心筋の糖代謝シフトを診る

   ・国立循環器病センター心臓内科 安村 良男、宮武 邦夫
   ・国立循環器病センター放射線診療部 石田 良雄、福地 一樹

心不全の進行とともに心筋利用エネルギー基質が脂肪酸からグルコースにシフトする現象(胎児化現象)が注目されている。その機序ならびに生理的意義は不明であるが、かかる現象を心筋代謝障害の指標として診断応用できる可能性がある。そこで、拡張型心筋症 (DCM)患者を対象に、かかる現象の検出を18F-FDG PETを用いて試みた。45例のDCM患者に対して、5時間の空腹条件下で18F-FDG 185 MBq静注直前からの動態イメージング(1時間)を実施し、心筋グルコース利用率(MGUr, mg/min/100g)をPatlak法を用いて計測した。視覚評価から対象は心筋18F-FDG無集積の13例と陽性集積の32例に分類され、陽性集積例は無集積例に比してLVEFが有意に低かったため、MGUrとLVEFとの相関を検討したところ有意な負の相関を認めた。しかし、MGUrは、血中遊離脂肪酸濃度(FFA)との間にも負の相関が認められ、空腹条件ながらFFA濃度の変化に影響されることが知られた。
 そこで、このFFA依存性の影響を除くために、上記陽性集積例のうち16例を対象に、ヘパリン静注負荷プロトコール(血中FFA濃度を約3倍に上昇)を適用しMGUrの変化を観察した。その結果、7例でヘパリン負荷によるMGUrの顕著な抑制が観察されたが、9例ではこのような抑制がなくMGUrが高値を持続した。18F-FDG無集積13例、陽性集積を示すがヘパリン負荷にて抑制された7例、同抑制されなかった9例の三群間でLVEFを比較すると、非抑制群は他群に比してLVEF低下が非常に高度であった。この非抑制現象は、心筋エネルギー代謝のグルコース依存度が非常に高いこと(血中FFA濃度上昇に対しても脂肪酸利用が促進されない)を示し、心機能低下との関連が認められたところから、代謝面からの心不全重症度指標として活用できることが示唆された。我々が考案したこの新評価法については、治療効果判定への応用や予後予測における臨床的意義をさらに検討中である。