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心筋血流用放射性医薬品としてのTl-201とTc-99m製剤の違い

要点
  • Tc-99m標識の製剤としてはMIBI(カーディオライト)とtetrofosmin(マイオビュー)が利用できる
  • Tc-99m製剤は半減期が短いため投与量を増やすことができ、心電図同期検査を施行する場合にも画質が良好である
  • Tl-201は歴史的に長く心筋血流検査に用いられており、虚血の検出や心筋生存性(生存能)の評価に優れている
  • 冠動脈疾患診断における臨床的な価値については、同程度と考えられている

両者の特徴を一覧として記載する

 

Tl-201 Tc-99mMIBIまたはtetrofosmin
目的

安静および負荷心筋,腫瘍シンチ用にも用いられる

心筋血流:安静および負荷
使用量 74-111 MBq 600-1110 MBq
薬剤の集積機構と特徴
  • 水溶性一価陽イオン
  • 心筋での抽出率=約90%
  • Na-Kポンプによる能動輸送で細胞内に入る
  • 後期像では再分布があり、時間経過で安静時の画像に近づく
  • 脂溶性
  • 心筋での抽出率=約60-70%
  • 細胞膜は拡散で通過するが、集積はミトコンドリア機能に関連する
  • 基本的には再分布は見られず、負荷時は2回の注射が必要
負荷時の注射方法
  • 負荷-後期像を撮る一般的方法:負荷時に注射、3-4時間後に後期像を撮像
  • 再静注法:負荷時に注射、再静注後に安静時の撮像
  • 24時間法:生存性の評価のために、24時間の緩やかな再分布も見ることがある
  • 1日法:負荷→安静の順で検査、または安静→負荷の順で検査を施行する
  • 2日法:負荷と安静を別の日に検査する
注射から撮像までの
時間とプロトコール例
  • 早期像は注射後、5-10分で開始
  • 後期像は3-4時間後

  • 30-60分が一般的(さらに早い時間も可能だが肝に集積がある)

データ処理と画質
  • 心筋集積のコントラストは良好
  • 乳房や横隔膜での減弱がTc-99mよりも大きい
  • 体重が大きい場合は画質不良
  • Tc-99mのエネルギーが撮像に適しているため画質良好
  • gated SPECTでの解析にも適している
前面像

 


良好な心筋の取り込みが見られ,肝と腎にも集積がみられる.右室はほとんど見えないかごく軽度の集積が見える程度である.
 


心筋への取り込みは良好で,肝から排泄されて胆嚢に貯留したTc-99m MIBIが描画されている.その後,消化管に排泄される.

 

[KN: 2010.08.01/10.25]